狭い土地の通風と採光を中庭で確保
狭い土地の場合は隣家との間隔が狭く、充分な通風・採光を得られない場合がありますよね。
そんな時に中庭を作ることで、問題点を解決することができます。
狭い土地のデメリットを中庭で解決した事例として大島功市先生の設計した矢部の家をご紹介します。
お話を伺った建築家
東京都国分寺市東元町3-19-9本多ナンバーワン(東京事務所)/茨城県水戸市千波町464-39 A棟103(茨城事務所) 042-326-2233 |
中庭のメリット
中庭を設けることで下記のようなメリットがあります。
北側に面している部屋にも中庭を介して日がとりこめる
後ほどご紹介する矢部の家の土地は北側が道路で、南側道路の土地よりも安いけど日が当たらないという問題点がありました。
「道路以外は囲まれている」という土地で採光をするのに中庭は有効です。
矢部の家の中庭は、3メートルかける3メートルで約5畳の広さがあります。
広ければ広いほど光は落ちてくるのですが、建ぺい率との関係や部屋とのバランスも見ることが大切です。
プライベートなスペースができる
中庭に部屋が向かうことでプライバシーの確保が可能です。
お子さんが遊んだりできる
小さいお子さんがいるご家庭では、目が届き屋外よりも危険の少ない中庭は絶好の遊び場といえます。
ガーデニングを楽しめる
庭いじりを楽しみたい方だけではなく、自然に触れられるので、お子さんのいるご家庭や自然を感じられる家作りを目指したい方にピッタリです。
洗濯物が干せる
洗濯物が人目につかないようにできるのもメリットのひとつです。
中庭のデメリット
中庭をもうけることで、デメリットも考えられます。
中庭があることで部屋が分断される
中庭を作ると、10畳と14畳と部屋が分断されてしまいますが、中庭を作らなければ24畳のスペースを取ることができます。
ご紹介する矢部の家は二世帯のスキップフロアなので、分断のデメリットがなく、スペースが分かれてしまってもプランが成り立ちました。
中庭の使い方
中庭でバーベキュー
中庭でバーベキューすることも可能です。
多目的で使うことができるので便利です。
中庭とタイル
タイルを貼っている物件もあります。
土だと濡れるとぬかるんでしまうけれども、タイルを敷くことで防止できるのです。
いつでも快適に使うことができます。
中庭とテラス
中庭にデッキを敷くことで、1階のお部屋同士に繋がりを持たせることができます。
洗濯物を干したり、椅子を置いてお茶をしたりもできるので、多目的で活用することが可能です。
中庭を作る際に気を付けたいポイント
土地を探す際には延べ床面積から坪を算出しますが、建ぺい率と容積率の関係にも注意をする必要です。
容積率が特に大切でこれをチェックしておかないと、欲しい部屋を確保できないので注意が必要です。
専門的な部分は専門家にフォローしていただいた方が良いと思います。
建ぺい率とは
「土地のどの位を建物に使うことができるか」という決まりです。
例えば、22坪の中に建ぺい率60%なら、13坪までしか建てることができません。
容積率とは
「その土地に建設することができる建物の延べ床面積」のことです。
矢部の家は容積率が160%でした。
面積に対して1.6倍までのボリュームを取ることができるので、「22坪×160%=35坪」の面積を確保できます。
中庭とリフォーム
中庭を後からリフォームしてお部屋にするのは可能ですが、違反行為になってしまう可能性があります。
建ぺい率の確認が必要です。
後から中庭を作りたい場合は難しいので、先に作っておくのがお勧めです。
中庭の広さ
通風と採光を考えると、6畳位のスペースがあると良いです。
中庭のある家の実例
狭い土地の問題を中庭で解決した例として、大島功市さんの設計した矢部の家をご紹介します。
矢部の家
こちらのお宅は相模原にあり、22坪というコンパクトな土地ですが、高い建物が建てられる地域です。
「二世帯住宅」「3階建ての家が欲しい」というお施主さんのご要望を受けて、土地探しからお手伝いをしました。
北側は道路に面しており、市街地の駅近く。
東・西・南には隣家が建っており、プライバシーの確保と通風・採光の両立が課題でした。
建ぺい率の問題があり、60%までしか建築ができなかったので、中庭を作るご提案をしました。
お住いになる家族について
ご家族はご主人と奥様、建築当時0歳だった男の子、そしてご主人のお母様の計4名です。
間取り
玄関は共用というご要望があった二世帯住宅です。
1階 駐車場・和室(多目的室)・書斎・玄関ホール
※)和室は将来子供部屋にするかもしれないとのことで、「1室は欲しい」というご要望がありました。
2階 寝室A(キッチンとお手洗い)と共用スペース
※)お風呂以外は生活ができるワンルームとして使えるように考えました。
トイレ・洗面・脱衣・浴室・サンルーム
※)共用
3階 LDKと夫婦の寝室
4階 屋上
※)洗濯物を干すことができます
設計の際に工夫した点
お母さまの個室を取らなければならなかったので、スキップフロアを考えました。
二世帯分離なので、お互いの視線や導線を独立させたいと思いました。
プライバシーを確保しながら、中庭を通して存在を確認できるように配慮しています。
その他の特徴
お施主さんのこだわりでコンクリートの打ちっぱなしを採用
コンクリートは耐震性と強度があり、防音性も高いという特徴があります。
木造と一緒で、メンテナンスをきちんとすることによって長く使えます。
メリットは、打ちっぱなしの場合、予算が抑えられます。
仕上げをしないのが味になります。
デメリットは、暑くて寒いです。
人によってはお勧めしないときもあります。
矢部の家も、コンクリートの打ちっぱなしで断熱材を入れていないです。
寒さのほうが厳しいのですが、外の気温が下がってくると冷たくなります。
その冷たさがコンクリートの内部にまで伝わるのです。
それを断熱材がシャットアウトするのですが、打ちっぱなしは断熱材を入れないので、外の冷たい温度がそのまま部屋の中に伝わります。
コンクリートは熱伝導性がいいので、蓄冷されてしまうので、冷蔵庫の中にいる感じですね。
冷たい空気は上から下に降りてくるので部屋全体に降りてきてしまいます。
また、夏になると周りが暑くなって来ますよね。
暑さも蓄熱されていくので、部屋の中も暑くなってしまうのです。
このように、断熱材は非常に重要な役割を果たします。
打ちっぱなしにこだわりがない方は断熱材を入れたほうがいいですが、「それを超える思い」がある場合は、コンクリートの打ちっぱなしでも良いと思います。
設計された大島さんは、個人宅を多く手掛けている建築家で、コンクリート建築に造詣が深いとのこと。
二世帯住宅や中庭のある家を要望されるお施主さんも多いそうです。
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