狭い敷地でもルーフテラスから光と風を取り入れる
中庭がとれない土地の場合
土地が狭い場合、なかなか中庭などの確保も難しい場合があります。
その場合、ルーフテラスを設けて、そこから光と風を取り入れる方法があります。
今回は、ルーフテラスから光と風を取り入れた事例として、飯沼竹一さんが設計なさった「真間の家」をご紹介します。
ルーフテラスのメリット
どういう形で構成するかにもよりますが、「都市型で内側に向ける」のであればプライバシーを確保できます。
外からの視線も気にせず、包み込まれた空間を確保できるのがメリットのひとつです。
バーベキューとかお茶とかもしやすいですし、お子さんが小さいころだったら夏場のプールにも使えます。
窓を開放して、風も光も十分に確保することができます。
周りが離れている場所だったら囲いはなくても良いですが、ルーフテラスは都心部の需要が高いので、外から見えないように壁を作ることが多くあります。
そうすることで、真間の家のように開放的なルーフテラスを作ることができます。
ルーフテラスのデメリット
壁で囲うのでコストがかかるだけではなく、床の防水をするのでメンテナンスも行う必要があります。
作って終わりではなく、メンテナンスの手間や維持費がかかるのがデメリットといえます。
また、注意したいのが消防法との兼ね合いです。
地域によってルールがありますので、土地選びは大切なポイントだと思います。
ルーフテラスは後から作れるの?
後からリフォームで作ろうというのは可能な場合がありますが、容積率と建ぺい率の問題が関係してきます。
そのため、専門家のチェックが必要です。
できれば、先にご要望をお伺いしてから計画的につくった方が良いと思います。
ルーフテラスのメンテナンス
メンテナンスは使っている材料によって異なります。
憧れだけなら年に1度ホテルなどで楽しめば良いですが、作って終わりではないので、メンテナンスの問題はリアルにちゃんと考える必要がある大切なポイントです。
天然の木製のデッキ
天然の木製のデッキだと、色抜け・日焼けが気になる人は向かないです。
「味がある」変化を楽しめる方向けです。
杉は耐久性がないので、3~5年で外部用の保護塗装をする必要があります。
メンテナンスは手間暇かかりますね。
しかし手間暇かからないものは、建築コストがかかります。
天然木の場合、木によってはささくれだったりするものもあるので、「素足で出るのか」という問題も考える必要があります。
その他の素材
真間の家は、防水の上にタイルを貼っていますが、樹脂製のデッキメンテナンスが簡単で耐久性も良いですよ。
ただし、夏場温度が上がると暑いという欠点があります。
テイストの好みで素材を選ぶ方が多いですが、室内と一体感を出すだけではなく、真間の家のように室内とルーフテラスを全くテイストを変えてしまうのも良いと思います。
ルーフテラスでガーデニングできますか?
できます。
ご紹介する真間の家も大きなプランターを入れて木を植えてありますし、スペースを確保することは可能です。
重量が重くなるものは設計段階で把握しておきたいので、大きな木を植えたい場合やガーデニングをしたい場合には先に相談をして貰えると嬉しいです。
水やりや掃除の問題もあるので、蛇口の設置や配置なども考える必要が生じるので。
ルーフテラスは床面積に入りますか?
上に屋根がなければ入りません。
ルーフテラスは建築面積に入りますか?
平屋なら入らないが、2階建てで下に居室があると含まれています。
ルーフテラス単独なら入らないです。
面積の計算の話は、状況によってもケースバイケースなので、建築家に相談するのがお勧めです。
ルーフテラスの建築コスト
坪単価で言うと、天井がなくて換気扇とかもないので、1坪当たりの坪単価の半額程度を見ると良さそうです。
坪単価70~80万の土地なら半額の35~40万程度ですね。
狭い土地と相性が良いルーフテラスではありますが、建築コストとメンテナンスなどを考えると、ローコスト住宅を目指す方には向かないかもしれません。
狭い土地の選び方
狭小住宅で大切なことは、「狭小だけど住まいたい暮らしができるかどうか」の判断です。
狭小は工夫が必要だし、コンパクトな分建築費用が安いイメージがありますが、それは床面積が少ないだけなので実は割高なんですよ。
家を建てる際には、色んな職人さんが同じだけ入るので、手間は変わらないんです。
そして注意したいのが、道路事情が悪いと搬入・搬出に手間かかる点です。
道路使用許可を取得したり、ガードマンを雇ったりするとその分コストもかかります。
近所に駐車場を借りると経費も掛かりますし、必ずしも安くはならないこともあるんです。
狭い土地の注意点
狭い土地というのは、小さい分だけ安く土地は買えるけれども、問題を抱えているケースが多くあります。
「この土地は本当に安いか」
「暮らしができるものが建てられるか」
考えて買うべきですし、買う前に専門家に相談してみるのが良いと思います。
狭小は土地が小さいから、都心にアクセスがいいところに手が届くのも魅力ですし、工夫をすることで土地の魅力を最大限にいかすことができます。
ただ、土地だけではなく建築物の値段も考えるべきです。
ローコスト住宅の考え方
50年・100年構造体として残るものを考えて設計をしています。
耐震性能や温熱環境を考えて作るから、「ローコスト」というご要望に沿って全てをカットしてしまうのは現実的ではありません。
「長期に渡って使える」住宅が、長い目で見るとお得なんです。
代替わりしても間仕切りを変えたりして使えますし、屋根の吹き替えをしても構造体自体は悪くならないです。
「狭小地=安く」はならない、環境の条件だけではなくそういう面もあるので、「必要な所にしっかりかけてあげる」ことも大切です。
土地の状況
こちらのご家族は幕張の新都心のマンションにお住まいでした。
「戸建てに住んで庭でバーベキューをしたい」というご要望がありました。
エリアとしては、お子さんの通学や通勤を考えて市川エリアで、土地探しからお手伝いをさせて頂くことに。
広い場所を探していたが、なかなか見つからず、1年近くかけてお施主さんが気に入ったこの土地に決まりました。
文教地域かつ駅が徒歩圏であり、敷地の面積は32.2坪でしたが単価が高かったです。
土地の特徴
南も東も、「ぎりぎりまで家があるので日光が入らない」という問題がありました。
また北側の道路は商店街に近い人通りが多い道で、朝8時~9時の間は車が通ることができません。
これらの問題を解決しお施主さんのご要望をかなえるために、「ルーフテラス」で通光と採風を確保しました。
お住いになる家族について
ご夫婦(50代前後)とお子様2人(建築当時、高校2年男子と高校1年男子)
間取り
駐車場と書斎、18畳のリビングダイニングとルーフバルコニー、4.5畳の子ども部屋2つに6畳の主寝室、そして納戸と7畳の多目的室のある3階建てです。
3階はご家族がウエイトトレーニングをするファミリールームとして、多目的で使える部屋を設計しました。
「リビングダイニングと庭がつながっていると良い」
「個室は小さくても確保できれば良い」
「お風呂は開放的なものが欲しい」
「職業柄書斎が欲しい」
「車は最低1台とめたい」
というご要望に沿ってプランを作成、2階にリビングダイニングとルーフバルコニー、そしてお風呂を置き、採光と通風そしてプライバシーを確保できるように配慮しました。
今回の事例の敷地の問題点をどのようにルーフテラスで解消しましたか?
今回は立地面で採光と通風の確保が難しかったので、ルーフテラスを取り入れました。
その際気になるのがプライバシーの確保です。
真間の家も、北側の道路は人通りが多いですし、すぐ横に隣家があります。
大きく開放できるように設計しても、外から除かれる心配があるとブラインドやカーテンを閉めっぱなしになってしまいます。
それでは折角作った意味がありませんよね。
できるだけ、窓にブラインドやカーテンを掛けなくても済むリビングダイニングを考えています。
その他の工夫した点をお聞かせください
ルーフテラス以外にも、家事導線の配慮など随所に工夫をしています。
採光と通風
光がとりにくいので風や光を色々な所から採っています。
寝室の上にトップライトを設置し、屋根の上やサイドのスリットなど、隣の家から見えないところに窓をつける配慮をしました。
真夏の暑いとき以外はある程度風が抜けるので、快適に過ごせると思います。
プライバシーの確保
市街地なので人通りが多く、ガレージで入り口を隠しました。
センサー付きのライトで明かりがつくようにし、完全には閉じてないが近寄りがたい雰囲気を出しました。
個人宅が約7割、診療所や店舗などの設計も手掛けている飯沼さん。
鉄骨やRC、そして木造など、要望とコストによって柔軟に対応をしてくださるとか。
丁寧にヒアリングをして、お施主さんの欲しいものを明確にするよう心掛けているそうです。
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