ユーザー やまぐち建築設計室 山口 哲央 の写真

心の鏡と住まいの関係

暮らしの認識が人生を変えるという設計思想。

環境を整える事の意味と

考え方の整理整頓を「認識」するところから。

和モダン住宅の間取り設計|動線と暮らしの質を高めるプランニング、和モダン住宅の詳細な間取り図に、建築家のペンが添えられている様子。LDK・玄関・収納・パントリー・トレーニングルームなどを含めた生活動線と家事動線を整理し、採光や風通しまで考慮した注文住宅の設計プラン。

なぜ「暮らしの認識」が

住まいづくりに影響するのか?

住まいづくりのご相談を受ける中で、

私が常に感じていることがあります。

それは、

間取りやデザインの前に、

すでに暮らしの質は決まっている

ということです。

多くの方は、住まいの快適さを

広さや設備、

デザインの美しさで測ろうとされます。

しかし実際には、

その人が

どのように暮らしを捉えているか?

という認識そのものが、

空間の感じ方を大きく左右しています。

つまり、

住まいは「空間」だけではなくて

「認識」によって完成するということです。

心の鏡は歪む、

セルフイメージと暮らしの関係。

人は誰しも、

自分なりの「自己認識」を持っています。

しかしその多くは、

必ずしも正確ではありません。

過去の経験、他人からの評価、

環境の影響、記憶の認識違いなど、

自分自身を

歪んだ鏡で見てしまっていることがあります。

例えば、

「自分にはこの状態が一番だ」

「広い家は落ち着かない」

「狭い空間は自分には似合わない」

こうした無意識の思い込みが、

住まいづくりの選択に大きく影響します。

事実なのか感想なのか?

多くの場合、

それは「事実」ではなく、

これまでの環境によって

形成された「解釈」に過ぎません。

環境心理学から見る「空間と認識の関係」

環境心理学では、

人の思考や感情、行動は

「環境によって大きく変化する」ことが

知られています。

例えば、

明るく整った空間では、思考は前向きになる

視線の抜ける空間では、心に余白が生まれる

素材の質感が高いほど、行動も丁寧になる

これは単なる印象論ではなく、

人間の認知と環境の相互作用として

説明される現象です。

つまり、

人は空間に合わせて

「自分の在り方」を変えていく

ということです。

住まいそのものが

人生を変えるのではなく、

人の「認識」と「行動」が変わるということ

よく「家を建てて人生が変わった」

という言葉を耳にします。

しかし本質的には、

空間が変わったから

人生が変わるのではなく、

空間によって「認識」が変わるから

人生が変わるのです。

例えば、

朝の光が美しく差し込むリビング

静けさを感じる寝室

外と内が緩やかにつながる中庭

こうした空間は、

単に美しいだけではなく、

「自分の時間の使い方」や

「思考の質」を

自然と整えていきます。

間取りの前に整えるべきもの

住まいづくりにおいて、

最も重要なのは「間取り」

ではありません。

もっと根源的な部分、

つまり、

自分はどんな時間を大切にしたいのか

どんな空気感の中で過ごしたいのか

どのような自分で在りたいのか

という「価値観」と「認識」です。

ここが曖昧なまま設計を進めると、

無駄に広いだけの空間

使われない部屋

どこか落ち着かない住まい

になってしまうことがあります。

和モダン×ホテルライクという

選択の本質はどういうことなのか?

和モダンやホテルライクな

住まいに惹かれる方には、

共通した感覚があります。

その多くは、

静けさを大切にしたい

余白のある暮らしを求めている

日常の質を高めたい

という「内面的な志向」です。

和モダンの空間が持つ陰影や素材感、

ホテルライクな整然とした美しさは、

単なるデザインではなく、

「心の状態を整えるための環境」

として機能します。

リフォーム・リノベーションにおける本質

新築だけでなく、

リフォームや

リノベーションにおいても

同じことが言えます。

空間を変えるという行為は、

単なる「古いものを新しくする」ことではなく、

「これからの自分の在り方を再定義すること」

です。

だからこそ、

収納を増やす前に、持ち物の意味を見直す

間取りを変える前に、動線の意識を整える

デザインを変える前に、暮らし方を見つめ直す

このプロセスが非常に重要になります。

設計とは「認識を整える行為」だということ。

私たち建築家の仕事は、

単に図面・設計図を描くことではありません。

本質的には、

住まい手、クライアントの「認識」を整えること

だと考えています。

対話を通じて、

本当に求めている暮らしを言語化し

無意識の思い込みに気づき

住む人の、

自分らしい価値観を見つけていく

そのプロセスそのものが、

設計の核になります。

暮らしを整えるということ。

暮らしを整える

ということは、

単に片付いた家に住むことではありません。

思考を整え

感情を整え

時間の使い方を整えること

そのための「器」として、

住まいがあります。

もし今、

どこか落ち着かない

何となく満たされない

暮らしに違和感がある

と感じているのであれば、

それは間取りの問題だけではなく、

理想と現実、そして

暮らしの環境に対する「認識のズレ」

かもしれません。

間取りの前に、暮らしを整えるということ。

住まいづくりは、

単なる建築行為ではありません。

人生の時間の質を設計する行為です。

間取りを検討する前に、

まずは、

どんな暮らしの時間を過ごすべきなのか?

家族との時間をどう過ごすのか?

自身が暮らす環境とは

どういった環境であるべきなのか?

そういった「問い」を持つこと。

その先に、

本当に心地よい住まいの在り方が

見えてくるものです。

やまぐち建築設計室では、

図面の前に「暮らし」を

丁寧に整える対話から、

設計をはじめています。

新築・リフォーム・リノベーションを問わず、

これからの暮らしについて、

暮らしのの在り方に

気付くための「問い」を考えてみませんか?

○関連blog
人生の質を整える言葉と思考|建築家が考える暮らしの哲学と人生の品格

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail785.html

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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
  建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/

住まいの設計、デザインのご相談は
ホームページのお問合わせから
気軽にご連絡ください
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I-5288、現状の適法性をどうすればよいのか……(大阪府)

ユーザー 富士山 の写真
投稿者: 
現住所‐都道府県: 
大阪府
現住所‐郡市区町村: 
 
依頼内容: 

はじめまして、寝屋川市******にある******の工場長の******と申します。この度は、ご相談をしたくフォームに記入しております。昭和61年の建物で、現在使用中の工場なのですが、建築台帳記載証明書の内容をみますと、建築確認の欄には交付年月日が記載されてますが、そこから下の欄すべて完了までが空欄になっております。現状の適法性をどうすればよいのかと経営者の******が悩んでおります。何か手立てがあればご指導宜しくお願いいたします。

建築家の所在地について:
同じ都道府県・近県の建築家を希望する





ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

家づくりの相談をすると、
多くの人が期待します。

 

「どんな間取りになるのか」

 

早く見てみたい。
形にしてほしい。

 

それは、
とても自然な気持ちです。

 

けれど、
すぐに間取りを描かないことがあります。

 

理由は、
描けないからではありません。

 

まだ描かないほうがいいと
考えているからです。

 

間取りは、
見える形です。

 

だからこそ、
一度出てくると、
その形に引っ張られます。

 

ここがリビング。
ここが寝室。

 

線が引かれた瞬間、
思考はその中で
動き始める。

 

けれど、
その前に必要な時間があります。

 

どんな暮らしを
したいのか。

 

どんな時間を
大切にしたいのか。

 

どこに
安心を感じるのか。

 

それらが
まだ曖昧なまま、

 

先に間取りを描いてしまうと、

 

あとから
違和感を修正する作業に
なってしまうことがあります。

 

設計は、
線を引くことより、

 

線を引く理由を
見つけることのほうが
大切です。

 

なぜ、この位置なのか。
なぜ、この広さなのか。

 

その問いに
答えられる状態で
初めて、

 

間取りは
意味を持ちます。

 

急いで描けば、
それらしくは見える。

 

けれど、
それが本当に
自分たちに合っているかどうかは、

 

また別の話です。

 

少し遠回りに見えるかもしれません。

 

話をして、
考えを整理して、
価値観を見つめる。

 

その時間を経てから、
はじめて線を引く。

 

すると、
間取りは
単なる配置ではなく、

 

暮らしの意図を持った形になります。

 

すぐに描かないのは、
遅れているからではなく、

 

深く考えているから。

 

見えない時間を
大切にすることで、

 

見えたときの形が、
より自分たちらしくなる。

 

間取りは、
早く出すことが
価値ではありません。

 

納得できる形で
現れることに、意味があります。

 

だから、
すぐに描かなくていい。

 

その待つ時間が、
設計を
静かに支えているのだと
感じています。

ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

最初のプランが出てきたとき、
少し安心します。

 

形が見えた。
ここから進んでいけそうだ。

 

そんな感覚。

 

けれど、
その案がそのまま
最終案になることは、
あまり多くありません。

 

何度か修正され、
少しずつ変わっていく。

 

ときには、
大きく方向が変わることもある。

 

それを見て、
不安になることがあります。

 

最初の案は
間違っていたのだろうか。

 

やり直しになっているのではないか。

 

けれど、
そうではありません。

 

最初の案は、
間違いではなく、

 

出発点です。

 

要望や条件をもとに、
いまの段階で
考えられる形を
一度置いてみる。

 

それによって、
はじめて見えてくるものがあります。

 

ここは良い。
ここは少し違う。

 

言葉だけでは
分からなかった感覚が、
具体として立ち上がる。

 

最初の案は、
答えではなく、

 

問いを明確にするための
道具でもあります。

 

実際に形になることで、
優先順位が
よりはっきりしてくる。

 

本当に大切にしたいことと、
そうでもないこと。

 

その整理が進むからこそ、
次の案が生まれる。

 

設計は、
一度で完成させるものではなく、

 

行きつ戻りつしながら
深めていくもの。

 

最初から
完璧な案が出てくることは、
ほとんどありません。

 

むしろ、
最初から整いすぎていると、

 

まだ見えていない可能性を
閉じてしまうこともある。

 

少し違和感があるからこそ、
考えが進む。

 

少し足りないからこそ、
対話が深まる。

 

最初の案は、
そのためのきっかけ。

 

だから、
変わっていくことを
否定しなくていい。

 

修正は、
後退ではなく、

 

前に進むための調整。

 

重ねていくことで、
形は少しずつ
自分たちに近づいていきます。

 

最終案は、
最初からそこにあったものではなく、

 

対話と試行錯誤の中で
見つかっていくもの。

 

その過程を
受け入れられたとき、

 

設計は、
単なる形づくりではなく、

 

納得を育てる時間へと
変わっていくのだと
感じています。

一級建築士事務所 アトリエマナ

●設計事例の所在地: 
東京
●面積(坪): 
100
●建物の種類(大分類): 
住宅関連
●メインの画像: 
●メイン画像の説明文: 

2世帯住宅です。

●建物の紹介文(依頼者のお悩み・ご希望を叶えるために工夫した点・採用した建材など): 

桜の木をのこしながら、二つの住宅からそれぞれ庭を眺める計画としました。

その他の画像: 

外観

エントランス

一級建築士事務所 アトリエマナ

●設計事例の所在地: 
千葉
●面積(坪): 
42
●建物の種類(大分類): 
住宅関連
●メインの画像: 
●メイン画像の説明文: 

外観

建てる前に依頼者が悩んでいた事・ご希望: 

畑の広がる敷地に対して、砂や風をやさしく受け止めながら、
内と外の境界を丁寧に整えることで、暮らしの中心に静かな広がりをつくった住まい。
大地から一段持ち上げられた床は、周囲の風景をゆるやかに切り取り、
まるで舞台のように、日々の営みをそっと浮かび上がらせます。
開きながらも、視線はやわらかくコントロールされ、
畑の広がりを感じつつも、内側には落ち着いたプライバシーが守られる構成。
風景と距離をとりすぎず、しかし生活は守られる。
外部と内部のあいだに設けた余白が、
光や風、季節の移ろいを穏やかに受け止め、
住まいに奥行きのある静けさをもたらします。
畑の風景にひらかれながら、
暮らしは静かに包まれる。
大地の上に設えられた、舞台のような住まいです

●建物の紹介文(依頼者のお悩み・ご希望を叶えるために工夫した点・採用した建材など): 

大きな開口部を実現するため、木質ラーメン構造とすることで、11mの柱のない空間とし、ヒロボロとした空間を実現しました。

その他の画像: 

リビング

通り土間の空間

I-5287、簡易宿泊所(約290m2・S造5階)(大阪府)

ユーザー Kiryu の写真
投稿者: 
現住所‐都道府県: 
大阪府
現住所‐郡市区町村: 
 
依頼内容: 

大阪市内 簡易宿泊所(約290m2・S造5階)予算は
9,000万~1億円程度を想定(内容により調整可能)設計・申請・監理のご相談
お世話になります。
大阪市内にて簡易宿泊所の新築計画を進めております。
本案件につきまして、設計から確認申請、工事監理までご対応いただける方、または各業務ごとにご協力いただける方を募集しております。
【計画概要】
・敷地面積:約81m2
・延床面積:約290m2
・構造:鉄骨造(S造)5階建て
【依頼内容】
・基本設計/実施設計(意匠・構造・設備)
・確認申請業務
・工事監理業務
※一括でのご対応、または一部業務のみのご提案も歓迎いたします
【費用について】
設計および監理費用につきましては、全体工事費の5%以内を目安に検討しております。
限られた予算の中での計画となるため、コスト面も含めたご提案をいただけますと幸いです。
本案件はできるだけスピーディーに進めていきたいと考えております。
柔軟にご対応いただける方、また長期的にお付き合いできる方とご縁があれば大変嬉しく思います。
ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にご連絡いただけますと幸いです。
簡単なご経歴や実績、概算のお見積りをいただけますと助かります。
何卒よろしくお願い申し上げます。
 
建築家の所在地について:
建築家の所在地にはこだわらない





I-5286、50坪の高低差のある土地で……(神奈川県)

ユーザー ぴの の写真
投稿者: 
現住所‐都道府県: 
神奈川県
現住所‐郡市区町村: 
 
依頼内容: 

50坪の高低差のある土地での建坪40坪弱の家の建築で、擁壁と深基礎と外構で600万円くらいの金額が提示され、建築費用が3000万しかかけられず、どうしようかと悩んでいました。
この予算では諦めるのはしかたのない事でしょうか。
土地は第一種低層地域です。

建築家の所在地について:
建築家の所在地にはこだわらない





ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

最初に伝えた要望が、
途中で変わっていく。

 

それに気づくと、
少し不安になることがあります。

 

最初に言っていたことと違う。
迷っているのではないか。
考えが定まっていないのではないか。

 

けれど、
要望が変わること自体は、
自然なことです。

 

むしろ、
よくあることです。

 

最初の要望は、
その時点での理解から
生まれています。

 

今の暮らしの延長。
これまでの経験。
なんとなくのイメージ。

 

そこから
対話が始まる。

 

言葉にしてみる。
誰かに聞いてもらう。
別の視点を受け取る。

 

その繰り返しの中で、

 

本当に大切にしたいことが、
少しずつ
見えてきます。

 

広さが欲しいと思っていたけれど、
実は落ち着きが欲しかった。

 

明るさを求めていたけれど、
本当はやわらかい光が良かった。

 

変わったのは、
気分ではなく、

 

理解が深まった結果。

 

設計は、
最初の要望を
そのまま形にする作業ではありません。

 

要望の奥にある意図を、
一緒に探していくプロセスです。

 

だから、
途中で変わることを
恐れなくていい。

 

むしろ、
変わらないまま進むほうが、

 

どこかで
無理が残ることもあります。

 

話しているうちに、
言葉が少しずつ
本音に近づいていく。

 

その変化を、
丁寧に受け止める。

 

それが、
設計の質を高めていきます。

 

一度言ったことを、
守り続けなくていい。

 

変わってもいい。
揺れてもいい。

 

大切なのは、
そのときの自分たちに
正直であること。

 

対話の中で育った要望は、
表面的な条件よりも、

 

ずっと深く、
暮らしに根づきます。

 

変わることは、
迷いではなく、

 

近づいている証。

 

そのプロセスを
安心してたどれるとき、

 

家づくりは、
より自分たちらしい形へと
静かに整っていくのだと
感じています。

ユーザー やまぐち建築設計室 山口 哲央 の写真

片付かない家の本当の理由。収納を増やす前に、暮らしの設計を整えるということ

住まいの相談を受けていると、かなり高い頻度で出てくる言葉があります。

「うちは収納が足りなくて」
「やっぱり片付かないのは、収納が少ないからでしょうか」
「今度家を建てるなら、とにかく収納を多くしたいんです」

もちろん、その気持ちはよく分かります。
日々の暮らしの中で、物が出しっぱなしになり、
床の上やカウンターの上に何かが積み重なり、
気がつけば“片付けなければいけない空間”になってしまう。
そうした状態が続けば、
「もっと収納があれば解決するのではないか」と考えるのは、
とても自然なことです。

けれど、設計という仕事を通して住まいを見続けていると、少し違う景色が見えてきます。

片付かない家は、必ずしも収納が少ない家ではありません。
むしろ、収納はたくさんあるのに整わない家も、実際には少なくありません。

この差は、どこから生まれるのでしょうか。

私は、その答えは「収納量」ではなく、動線と暮らし方の設計にあると考えています。

もっと言えば、片付かない家というのは、収納の問題である前に、
暮らしの流れと思考の整理が、空間の中にきちんと落とし込まれていない状態なのです。

収納は多いのに、なぜ整わないのか

収納が増えれば片付く。
この考え方は、半分正しくて、半分は違います。

たしかに、収納が極端に少なければ、
物の居場所は不足し、
暮らしは乱れやすくなります。
けれど実際には、
収納が多いことと、
住まいが整うことは、
同じではありません。

なぜなら、収納とは「箱」に過ぎないからです。

どれだけ立派な箱を用意しても、
どこで使うのか、
どこに戻すのか、
どの頻度で使うのか、
誰が使うのか、
その判断が曖昧なままであれば、
収納はただの“押し込む場所”になってしまいます。

すると、何が起こるか。

ひとまず入れる。
あとで整理しようと思う。
見えないから大丈夫だと感じる。
でも、必要な時に取り出しにくい。
戻すのが面倒になる。
そしてまた、出しっぱなしが始まる。

この流れは、かなり多くの家で起きています。

つまり、片付かない原因は「収納がない」ことではなく、
収納が、
暮らしの流れとつながっていないことにあります。

ここを見落としたまま収納計画を立てると、
住まいはどこかで無理を抱えます。
その無理は、日々の小さな手間として積み重なり、
やがて「片付けても整わない」
「頑張っているのに暮らしが軽くならない」
という違和感に変わっていきます。

整理収納は、
テクニックではなく“価値観の整理”である

整理収納という言葉は、
どうしてもハウツーとして受け取られがちです。

どこに何をしまうか。
どう分類するか。
どんなケースを使うか。
見せる収納にするか、隠す収納にするか。

もちろん、それらも大切です。
ですが、本当に大切なのは、もっと手前の部分です。

それは、何を大切にしたいのかということです。

どんな暮らしをしたいのか。
どんな朝を過ごしたいのか。
帰宅したとき、どんな感覚で家の中に入りたいのか。
子どもとの時間をどう持ちたいのか。
家事にどれだけ時間と意識を使いたいのか。
空間を“整えること”に、どの程度の意味を感じているのか。

これらは一見、
収納とは関係のない話に見えるかもしれません。
けれど、実はここが最も重要です。

なぜなら、収納とは、
単に物をしまう行為ではなく、
暮らしの価値観を物理的な空間に
翻訳する行為だからです。

例えば、朝の支度を静かに、
無理なく進めたい人と、
多少賑やかでも家族が同じ場所で
動いている方が心地よい人とでは、
動線の考え方は変わります。
家事を効率的に終わらせて余白の時間をつくりたい人と、
家事そのものを生活の時間として
丁寧に味わいたい人とでも、
必要な収納のあり方は変わります。

つまり、整理収納の本質は、単に整頓ではなく、
自分たちの暮らしの価値観を明確にすることなのです。

ここが曖昧なままでは、どんなに見た目の美しい収納をつくっても、どこかでずれてきます。
逆に言えば、価値観が整理されていれば、収納は必要以上に大きくなくても機能します。

住まいは、価値観の器です。
だからこそ、整理収納を考える時には、先に“何を持つか”よりも“どう生きたいか”を考える必要があります。

人は意思ではなく、環境によって行動している

ここで大切になるのが、環境心理学の視点です。

人は、自分の意思だけで暮らしているようでいて、
実際にはかなり多くの行動を環境に影響されています。

手の届く場所にあれば使う。
見える場所にあれば意識する。
戻しやすければ戻す。
遠ければ面倒になる。
扉を開ける必要があれば一拍の負担が生まれる。
ワンアクションで済めば続く。
ツーアクション、スリーアクションになると止まりやすい。

これは、意志の強さや性格の問題ではありません。
人間の行動特性として、ごく自然なことです。

だから私は、片付けられないことを、
その人の能力や性格の問題として
考えるべきではないと思っています。
問題があるとすれば、
それは多くの場合、環境の側です。

使う場所と戻す場所が離れている。
一時置きの場所がない。
家族ごとの行動に対して
収納の位置が合っていない。
動線の途中に“滞留”が起こる。
見えなくすることだけを優先して、使い勝手が悪くなっている。

こうした小さな不一致が、
毎日の生活の中で少しずつ負荷となり、
結果として散らかるのです。

逆に言えば、環境が整っていれば、
人は頑張らなくても整いやすくなります。

私はこれを、
「片付ける家」ではなく「片付く家」
という言い方で捉えています。

頑張って片付け続けないと維持できない家は、
どこかに設計上の無理があります。
本来、住まいは、
努力を要求するものではなく、
暮らしを支えるものであるべきです。

動線は、暮らしの品位を決めている

動線という言葉は、
家づくりではよく使われます。
けれど、その意味が「移動しやすさ」だけで
捉えられてしまうことも少なくありません。

本来、動線とは、
単なる移動経路ではありません。
それは、生活の流れそのものです。

帰宅したときの流れ。
朝起きてから身支度を整えるまでの流れ。
料理をして、配膳し、片付けるまでの流れ。
洗濯をして、干して、
取り込んで、畳んで、しまうまでの流れ。
子どもが学校から帰ってきて、
荷物を置き、手を洗い、宿題に向かう流れ。

住まいは、
こうした日常の流れを何度も繰り返す場所です。
そして、その流れが滑らかであればあるほど、
暮らしは静かに整います。

動線が整っている家では、
無理な判断が減ります。
「とりあえずここに置いておこう」が減り、
「あとでやろう」が減り、
「どこにしまったっけ」が減っていきます。

その結果、時間が節約されるだけではありません。
思考のノイズが減り、気持ちの負担も減ります。

これが、とても大きいのです。

片付けや家事というのは、
身体的な負担だけでなく、
精神的な負担も伴います。
終わらない感じ。
残っている感じ。
いつも何かに追われている感じ。

住まいの中にこうした感覚が積み重なると、
空間は休まる場所ではなく、
“常に何かを促してくる場所”になってしまいます。

だからこそ、動線設計は、
単なる効率の話ではありません。
それは、
暮らしの品位を整えるための設計でもあるのです。

余白がない家は、
心も忙しくなる

もう一つ、整理収納を考えるうえで
非常に大切なのが、余白です。

収納を計画する時、
多くの人は「できるだけたくさん入るように」と考えます。
それ自体は理解できますが、
実は“詰め込める”ことと“整いやすい”ことは別です。

収納が常にいっぱいの状態では、
出し入れに気を使います。
戻す時にも少し考えなければいけません。
少しでも物が増えると、すぐに溢れます。
その結果、別の場所への仮置きが始まります。

つまり、収納に余白がないと、
暮らしにも余白がなくなるのです。

余白とは、ただ空いているスペースではありません。
それは、変化を受け止めるための器であり、
急な出来事や、
一時的な揺らぎを吸収するための柔らかな部分です。

家族で暮らしていれば、
毎日が完璧に予定通りに進むわけではありません。
忙しい日もあれば、体調が優れない日もある。
来客もあれば、季節によって持ち物も変わる。
子どもの成長によって必要な物も変わっていく。

そうした変化に対して、
住まいが固くできすぎていると、すぐに破綻します。
一方で、余白を持って設計された住まいは、
変化を受け止めることができます。

私は、住まいにとって
この“受け止める力”はとても重要だと思っています。
それは見た目の美しさ以上に、
暮らしの安定感を支えるものだからです。

片付けの問題は、
人生の使い方の問題でもある

少し大げさに聞こえるかもしれませんが、
片付けや整理収納の問題は、
実は人生の時間の使い方にもつながっています。

探し物に時間を取られる。
出しっぱなしの物が気になって気持ちが落ち着かない。
片付けなければという意識が、頭のどこかにずっと残っている。
家事に追われて、余裕がなくなる。
疲れているのに、家の乱れを見るだけでさらに気持ちが重くなる。

こうした状態は、
単なる“部屋の乱れ”ではありません。
それは、その人の時間や
感情の流れにまで影響を与えています。

だから私は、
整理収納の相談を受ける時にも、
単に収納の数や棚の寸法の話だけで
終わらせてはいけないと考えています。
本当に大切なのは、
その家でどんな時間を過ごしたいのか。
どんな気持ちで帰宅したいのか。
どんな朝を迎えたいのか。
その先に、どんな人生の質を求めているのか。
そこに触れないと、本質的な解決にはならないからです。

片付いた家とは、単に物が隠されている家ではありません。
それは、時間と気持ちが整えられている家でもあるのです。

新築でも、リフォームでも、最初に考えるべきこと

これから家を建てる方、
リフォームやリノベーションを検討している方に、
ぜひお伝えしたいことがあります。

それは、収納計画を考える前に、
暮らしのシナリオを考えてほしいということです。

朝、誰が最初に起きるのか。
帰宅した時、上着や荷物はどこへ行くのか。
食品や日用品のストックは、どのタイミングで管理するのか。
洗濯は誰が担い、どこで畳み、どこにしまうのか。
子どもの物はどこまで親が管理し、どこから自分で管理させるのか。
仕事と暮らしの切り替えは、空間のどこで行うのか。

こうしたことを丁寧に見ていくと、
必要な収納の量も位置も、
かなり具体的に見えてきます。
そしてその時初めて、
「この家には何が必要で、何は不要か」が
分かるようになります。

家づくりでは、
どうしても“設備”や“大きさ”や“数”に
目が向きやすくなります。
けれど、
本当に暮らしを支えているのは、
数字では測れない部分です。

どれだけ心地よく動けるか。
どれだけ自然に戻せるか。
どれだけ意識せずに整い続けるか。

そこにこそ、設計の力があります。

暮らしを設計するということ

やまぐち建築設計室では、
住まいを単なる器としては考えていません。
住まいとは、人生を受け止める環境であり、
日々の感情や関係性や
時間の質を支える背景だと考えています。

だから、収納も動線も、
単独で扱うことはありません。
それらを、暮らし全体の中で位置づけて考えます。

片付けやすさ。
家事のしやすさ。
家族の距離感。
静けさ。
余白。
視線の抜け。
気持ちの切り替え。
光の入り方。
陰影のあり方。
落ち着ける場所の存在。

そうした一つ一つが重なり合って、
住まいの質は決まっていきます。

そして、その質は、単に便利かどうかではなく、
どう生きたいかに深く関係しています。

住まいを整えるということは、
暮らしを整えることです。
暮らしを整えるということは、
自分たちの価値観を整えることでもあります。

だからこそ、
収納を増やす前に、暮らし方を設計する。
その順番が、とても大切なのです。

最後に。
片付かないことを、責めなくていい

もし今、
家が片付かないことに悩んでいる方がいたら、
まずお伝えしたいことがあります。

それは、
自分を責めなくていい、
ということです。

片付けが苦手だから。
自分がだらしないから。
忙しくてできていないから。

そうやって考えてしまう方も多いのですが、
実際には、それだけではありません。
多くの場合、住まいのどこかに、
暮らしとのずれがあります。

そのずれを見つけ、整えていくこと。
それができれば、
住まいはもっと自然に、
もっと無理なく、整っていきます。

片付けとは、我慢や根性の問題ではありません。
収納とは、数を増やせば済むものでもありません。

本当に必要なのは、
暮らしの流れを見つめ、
価値観を整え、
それを空間に丁寧に翻訳することです。

その先に、
散らからない家ではなく、
整い続ける住まいがあります。

間取りの前に、
人生と暮らしについて話しませんか。

住まいは、正解を押しつけるためのものではなく、
その人らしい日常を
支えるためのものだと、
私は思っています。

ご相談について

やまぐち建築設計室では、
新築住宅のご相談はもちろん、
リフォーム、リノベーション、
暮らし方の見直しを含めた住まいのご相談を承っています。

「片付かない理由を、収納の数ではなく暮らし全体から見直したい」
「家事や整理収納をもっと楽に、自然にできる住まいにしたい」
「見た目だけではなく、暮らしの質そのものを整えたい」

そうした想いをお持ちの方は、
どうぞご相談ください。

住まいの形を整える前に、
暮らしの輪郭を整えていくところから、
丁寧にお話を伺います。
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
  建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/

住まいの設計、デザインのご相談は
ホームページのお問合わせから
気軽にご連絡ください
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