●建物の紹介文(依頼者のお悩み・ご希望を叶えるために工夫した点・採用した建材など):
不要な壁を全て取っ払い、南北両方に窓があるという、この室の最大の特徴を素直に活かした
オープンな空間を提案しました。南北に爽やかな風が走り抜ける、風の通り道のような空間です。
コンクリート構造壁と水廻りスペースの間仕切壁以外、天井まで届く壁は一切設けていません。
オープンな空間は、引戸や什器、布製パーティションなどによって適度に仕切られ、適度に繋がります。
玄関ホールであり、アトリエとしても機能する土間スペースと室内との境界部に設けた風布(布製パーティション)は、依頼主の好きな「青」をテーマにオリジナルにデザインした柔らかい布の壁です。染め時間を変えることで1枚1枚異なる濃淡をもたせた藍染めの長いショールのような布をただ並べただけのシンプルな布の壁は、玄関ホールからの視線を適度に制御するほか、ゆらぎ、ひらめくことで、風という見えない空気の流れを可視化し、涼感や癒しを与えます。
内装については、素材感あふれる重厚な空間をテーマに、墨入モルタル、コンクリートブロック、杉の足場板、鉄粉の錆塗装、ウォールナットの無垢フローリング、バイブレーション仕上げのステンレス板、ラワン合板などなど、個性あふれる素材を適材適所に使い分けています。
コンクリートの構造体には敢えて塗装などの仕上げを施していません。一部、壁紙の下地であったモルタル壁に白いパテの痕も残りますが、これもこの室の歴史=味として敢えて残しています。
良い意味でざっくりとした簡素な間取りと、個性あふれる素材で構成した空間は、余計な飾りを必要としない「素の空間」となりました。