傾斜地に擁壁一体型の家

傾斜地の問題点

傾斜地の場合には、建物本体の工事費だけではなく、土地の造成や擁壁に費用が掛かってしまうケースがあります。
一般的には、傾斜地の価格は平地の敷地に比べて安いですが、土地の造成や擁壁の費用を加味すると、平地より高くなってしまうこともあるのです。
そんな時に、「擁壁一体型」を採用することで、コストメリットを活かした家を建てることができます。

元々ある擁壁が使えるケースもある!

以下の3点を満たした擁壁であれば、もともとある擁壁が使えるケースもあります。
 
・建築当時に工作物として確認申請がしてあり確認済証がある
・完了検査を受けていて検査済証がある
・状態が良い
 

擁壁の工事費用

擁壁を造成する際の費用は、高さや敷地状況により異なりますが、概ね1mにつき30~40万円程度です。
つまり、20mの擁壁が必要な時には、600万円~800万円程度の費用が掛かります。
 
傾斜地の多い自治体では、「擁壁補助金」という擁壁工事に必要な工事費用を補助してくれる制度を設けているケースがあります。
これらを利用することで、擁壁工事の費用を安く抑えることも可能です。
 
東京都大田区の場合には、「がけ等の整備工事助成制度」という名称で補助を行っています。
助成限度額が擁壁の高さによって決められており、最大で整備工事費の3割以内を補助する制度です。
補助金を受給するには、平成34年3月31日までに整備を完了する必要がある他、様々な条件が制定されています。
 

擁壁一体型のメリット

擁壁一体型を採用することで下記のようなメリットがあります。
 

コストメリット

擁壁を独立させるためには、基礎を深く掘り下げる必要があります。
掘削だけではなく、掘り出した土を捨てるためにもお金が掛かります。
コストを下げるには掘削土量を減らすのが一番です。
土地によりますが、2割程度も費用が異なるケースもあります。
 

確認申請の簡素化

高さが2mを超える擁壁の場合、工作物に該当するので建築物に加えて擁壁にも確認申請が必要になります。
しかし一体型にすれば、建築物の確認申請に一本化することで、申請手数料も安くなり、確認申請の回数や手間を減らすことができます。
 

擁壁一体型のデメリット

しかし、擁壁一体型には以下のようなデメリットもあります。
 

売却時

将来的に売却を考えた時、建物だけを壊すことはできないので、場合によっては売却が難しくなる可能性があります。
 

擁壁一体型と混構造

擁壁一体型の基礎はコンクリートになります。
しかし、上物はコンクリートだけではなく、木造・鉄骨で作ることも可能です。
 
一般的には、地下にコンクリートで上物が木造というのが、コスト面を考えると一番安いです。
木造・鉄骨・コンクリートの順に建築コストが安くなります。
 

木造・鉄骨・コンクリートのコスト面以外の違い

木造の場合には、上物だけを壊しやすいので、売却や建て替えを考えた時に便利です。
鉄骨のメリットは、木造よりも柱の数を少なくすることができる点です。
コンクリートは、「暑くて寒い」というイメージをお持ちの方も多いですが、断熱に気を配ることで快適な住まいを実現することができます。
 

擁壁一体型の実例


 
擁壁一体型の実例として、鈴木賢建築設計事務所の鈴木賢氏が手掛けた、「Simple Box House-擁壁一体型のコンクリート打放3層箱型住宅-」をご紹介します。
 
場所:東京都
ご家族:ご夫婦と成人なさったお子様3人
面積:延床面積327.61㎡(99.10坪)(容積率対象床面積212.76㎡(64.35坪))
 
お施主さん夫婦は、将来は独立したり仕事の関係などで家を離れる可能性もある子供たちと限られた時間を家族5人で楽しく快適に過ごせるすまいを望んでおられました。
 

敷地の状況・問題点


 
こちらの土地は、土地と道路に高低差があり、建築基準法上の制限だけではなく、風致地区の制限もある土地でした。
また、隣地側である背面に高い崖を背負っているのもウイークポイントのひとつです。
 
擁壁の耐用年数は、大きな問題がなく適切に管理されていれば50~70年です。
こちらに元々あった擁壁はボロボロだったので壊して、隣家所有の崖側の擁壁は強度を確認した上でそのまま使い、道路側2方に擁壁を作ることになりました。
しかし、擁壁を自立させるためには、擁壁の基礎を深く掘り下げる必要が生じます。
土地を深く掘り下げるのはコストが掛るという難点がありました。
 
また、擁壁の造成工事には、1ヶ月~1ヶ月半程度掛かります。
擁壁と住まいを分離してしまうことで、まずは擁壁の造成を行い、その後住まいの建築に入るので、工期がより長くなってしまうのです。
 

擁壁一体型を採用した理由

先ほど触れた制限だけではなく、お隣の高い擁壁を背負っていたので、「崖条例」が関係する土地でした。
基本的には、崖の上に建てるなら崖が崩れないように擁壁を作る必要がありますし、崖の下に建てる場合には、その上の崖が崩れないようにする必要があります。
上の隣家所有の崖には手を加えられない今回の場合では、対処法として、万が一崖が崩れても影響がない所まで建物を離して建てるか、崩れても壊れないような構造の建物にする必要があります。
 
今回の土地は、崖が崩れても影響ない所まで家を離せる広さがなかったので、「擁壁一体型でコンクリート」という選択になりました。
 

断面図

断面図は以下のようになっており、擁壁と住まいが地下のコンクリートで繋がっています。

断面図

擁壁一体型を採用したメリット

前述したコストメリットと確認申請の簡素化、そして工期の短縮に加えて、擁壁一体型を採用することで、外観に統一感が生まれます。
ぱっと見た感じでは、要塞のように見えるお宅ですが、「コンクリートは無機質だから緑が映える」というメリットもあります。

その他に工夫した点


 
家の中でのパブリックエリアにはコンクリート、プライベートなところは木を使用し、それぞれの素材のよさを良い所取りしました。
シナベニアの合板を使っていますが、お施主さんのご要望で濃い色を塗ったそうです。
落ち着いた雰囲気になり、「お施主さんの意見を取り入れて良かったと思います」と鈴木さん。
 

 
また、「窓を少なくしたい」というご要望があったので、トップライトで光を取り入れています。
擁壁一体型でも上から光を取り入れることで、室内を明るくすることができます。
 

 
コンクリート打放しの壁にトップライトからの光が注ぎ季節や時間によって違った表情を見せます。
このような効果もコンクリート住宅のメリットです。
少ない窓から効果的に光を取り入れる工夫をしています。
 
「安い土地にはそれなりの理由が潜んでいることが多いですが、土地選びから携わることで、その土地に合った適切なアドバイスをすることができます」
 
 

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