傾斜地にスキップフロアの家


 
傾斜地に家を建てるのは難しいのでは――そう思って、せっかく見つけたお得な傾斜地の購入をあきらめている人も多いのではないでしょうか。
でも、眺望に優れていることなど、傾斜地ならではの良さがあります。
傾斜地を生かす方法の一つがスキップフロアの家。
そんなお宅を紹介しましょう。

お話を伺った建築家

ユーザー 荒谷省午建築研究所 荒谷省午 の写真
西宮市櫨塚町3-10 西宝ビル2階
0798-31-3484

 

傾斜地の問題点と利点

傾斜地は擁壁や造成工事が必要な場合が多く、その場合は余分な工事費がかかります。
また、地盤が軟弱であれば、崩れる心配があります。
設計上も、平地に建てるときとは違ったアイデアが求められますから、施主さんと設計士との相性が建物の満足感に影響することもあるでしょう。
 

土地購入費が安い

しかし、それを補う利点があるのも傾斜地です。
傾斜地は、何といっても土地代が安いのが魅力。
土地購入費が少ない分、建物に費用をかけられますので、施主さんの希望と理想をできるだけ取り入れた設計も可能です。
 
もちろん、土地の形状ゆえに叶えられないこともありますが、今回取材したケースでは、土地購入時から設計士さんに相談があったため、代替案を示すなどして、施主さんの希望にできるだけ沿った工夫ができたといいます。
  
設計士にも、土地のデメリットを建物でメリットに変えられるのも傾斜地の良さだという考えがあり、今回の土地を始めて見たとき、すごくやりがいを感じたと話しておられました。
  

眺望が良い

 
傾斜地のもう一つの魅力が眺望の良さです。このため、高い位置にリビングなど最も重視する部屋を配して、開放感のある生活を実現できます。
 
傾斜地の問題点をむしろ逆利用して、土地の形状を生かした建物を考えて実現したのが、スキップフロアの家です。
 

スキップフロアのメリット

  • 単純な空間が面白い空間に変わることが、スキップフロアのメリットの一つといえます。
    段差ができることで、視線が左右だけでなく上下に動くことで変化が生まれます。
  • 階段が増えると体への負担が大きいと思われるかもしれません。確かにバリアフリーにはなりませんが、一つ一つの階段は短いため、かえって体への負担は小さくなるといえます。
  • 段差によって生まれる空間をデッドスペースと考えず、屋内なら収納に、屋外なら物置や車庫などに活用できます。

スキップフロアのデメリット

  • 階段が多いため、小さい子どもやお年寄りが生活しづらい面はあります。
    ただ、慣れてくれば、子どもたちはむしろ、変化のある生活を楽しむようになります。
  • 基本的にそれぞれの部屋には仕切りを作りません。
    このため、開放感がある一方で、プライバシーが守りにくいという面があります。
  • 同時に、こうした設計上、通気がいい反面、エアコンが効きにくいというのもデメリットの一つでしょう。
    ただ、この点に関しては、壁の代わりに厚手のカーテンを利用するなどすれば、一定の改善できます。

傾斜地のスキップフロアの実例

 

KRAMPON(設計:荒谷省午建築研究所)

「傾斜地は変化に富んでいて面白い」。
こう語る荒谷省午さんが設計した土地は、兵庫県西宮市の山の中腹に残された自然の傾斜地。
周囲に家が点在する中、森のような色濃い雑木林が山肌を埋めていました。
 

土地購入前に相談

施主さんからの最初の相談は「安くて買いたいんだけど、家が建てられるか見てほしい」というものでした。
高低差は約12メートル。
以前から知っていたエリアで、土地を初めて見た荒谷さんは、むしろやりがいを感じたそうです。
自分らしさが出せる土地だ、と。
 

眺望を生かしたリビング

施主さんが気に入ったのは、やはり眺望。
南東方面に大阪湾が望め、リビングを高い位置に配置してほしいというのが、一番の要望でした。
その要望を実現してできたのが、南東側と南側をほぼ全面大きな掃き出し窓にしたリビングダイニングです。
しかも、南側は1階の寝室の屋根を兼ねたバルコニーになっていて、こちら側の見晴らしも抜群。明るくて開放感いっぱいです。
 

天窓からヤマザクラ

さらに、元々生えていた樹々のうち、根が浅いニセアカシアは伐採して、大きなヤマザクラとクスノキ、コナラを残したのですが、リビングにいてもこれらを楽しめるように、天窓を設けました。
春には、見上げた天窓から満開のヤマザクラが楽しめます。
 

傾斜を生かした大階段

2階にはこのほか、洋室1部屋と、水回りと物干しに使える壁のあるテラスを、3方から向き合う形で配置。中央は1階から吹き抜けになっています。
吹き抜け部分が、傾斜地に建つこのお宅の最大のポイントです。土地と同じ傾斜で大階段を設けたのです。このため、この部分の造成工事はほとんど必要ありませんでした。

造成費用をカットする工夫

傾斜地のデメリットの一つである造成費用をカットするアイデアは、他にもあります。
1階、2階とも基礎が乗る部分を削るのは最小限に抑え、傾斜の下側にコンクリートの擁壁を打って建物を支える構造にしたことです。
このおかげで、1階の寝室の下にできたスペースは駐車場として活用できました。

大階段をフル活用

大階段は、下が広く、上に行くにつれて狭くなる三角形をしています。
これが三角形の吹き抜けにぴったり合うようにつくられています。
その天井にも三角形の天窓を設けたため、採光もバッチリです。
 
また、2階のリビングダイニングなど3つのスペースの吹き抜け側には、構造体兼用の本棚を設置。大階段の1段1段の踏み込みも、下に文庫本を収納できるようにしてあります。
気が向いたら階段に座って読書を楽しむこともできます。
 

クローゼットの上にロフト

玄関を入ると、正面に大階段に続く3段の階段。右側には階段4段分低くなった寝室があります。
玄関に立つと、寝室へのドア手前にのぞく小さなロフトが目に入るのですが、これは寝室のクローゼットの上を利用した小部屋。
高さが1.4メートル以下ですので、建築基準法上、階数にはカウントされません。
これもスキップフロアのメリットの一つです。

気になる暖房効果は

2階はリビングダイニング、洋室、水回りそれぞれの間には仕切りがありません。
このため、暖房効果を考えてカーテンを仕切りとして取り付けました。
しかし、リビングダイニングの床暖房と日当たりの良さで冬でも暖かく、カーテンは開けっ放しだそうです。
 

出てきた巨石を擁壁代わりに

できるだけ造成面積を少なくしたのですが、それでも六甲山系の山ですから、大きな石がたくさん出てきました。
処分するにも費用がかかりますから、これを駐車場からエントランスに通じる外階段の両サイドや、削った場所の擁壁として活用しました。
今では自然のツタがびっしり覆い、自然の装いを演出しています。

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