遮音性に優れ、温度変化が少ない地下室・三村邦彦建築設計事務所 三村 邦彦
容積率が厳しい場合、地下室を作ることで容積率の範囲内でもっと広い家を建てることが可能になります。
また、地下室は遮音性に優れ、温度変化が少ないので音楽の演奏室・シアタールーム・ワインクーラーとしても重宝します。
三村邦彦建築設計事務所 三村 邦彦さんに地下室について伺いました。
貴社が地下室を手がけるきっかけがありましたら教えて下さい。
独立開業前に自宅兼アトリエを建築する事になり、敷地面積に対する建物面積の上限では十分な空間を得られなかったので、面積が緩和される地下室を設け、設計事務所の資料倉庫としました。
自宅兼アトリエは、モデルハウス的にご案内していたので、その際に地下室に興味をもたれる設計依頼者が多く、開業当初は、2軒に1軒くらいの割合で地下室のある住宅を設計監理していました。
地下室のメリット・デメリットを教えて下さい
メリットとしては、敷地面積に対する建物面積が地上では不十分な場合、地下室の面積緩和で不足する面積・空間を補えられ、音楽演奏・AV視聴の防音・遮音性が優れ、温度変化が少ないのでワインクーラーとしても重宝します。
また、土地が高価な都市部での土地購入時、地下室を利用することにより、土地面積が小さくすみ、土地購入費は勿論、その後の固定資産税も抑えられる。
デメリットがないように計画・提案していますが、強いて言えば大開口部(窓)がとり難い事でしょうか。施主さんの立場からだとハウスメーカーに依頼が出来ない事が大きいのではないでしょうか。
地下室は容積率が緩和になるそうですがその内容について教えて下さい。
住宅用途に限定(マンション等の共同住宅含む)で、住宅用途に供する部分の面積に対し1/3を上限として地下室は容積率対象床面積から緩和されます。
例えば、1階・2階共床面積50㎡の総2階建て住宅で地上部分の床面積100㎡であれば、地下室50㎡までは容積率対象床面積を増やさずに築造できます。
地下室の費用は一般的な部屋に比べてどれくらい高いのでしょうか?
敷地条件・仕様によりますが、地下室にキッチン・トイレ・洗面・浴室等の給排水設備的な要素を設置しなければ、地上部分の面積単価と同等くらいに抑えるようにコスト管理しています。
地下室のRC(鉄筋コンクリート造)躯体が基礎となることが多く、その場合は基礎工事費が削減される事になりますし、地盤改良・杭補強工事が無くなる場合や、高低差がある敷地で地下室を擁壁とすることにより土留工事が無くなり、トータルでは安くなる場合もありますし、そのような悪条件を克服する手法として活用しています。
地下室の結露対策はどうしていますか?
第一に、地下耐圧盤(コンクリート床)の高さを通常時の地下水位より高い位置とし、壁・床は二重とし、湿気を遮断し、空気が留まらないように換気計画することにより、結露・カビを発生させないように対処しています。
想定以上の結露に対応できるような2次対策を配慮するようにしています。
地下室の遮音性能はどうなのでしょうか?
一般的には、地中で、RC(鉄筋コンクリート) 造なので、木造より遮音性は優れています。
地下室のある家を建てたいと思っている方になにかアドバイスがありましたら教えて下さい。
プラン計画の際には、3階建やロフト(屋根裏)を含めた地上部で出来るだけ賄えるように十分に検討した結果、どうしても必要な場合に地下室を計画された方が良いと思います。
ドライエリア(空堀)等を設け、複数の窓を設置し、地下室だから暗い、風通しが悪い等の妥協点ない地下室を造ることが後悔しない地下室になると思います。
折角、地下室を造ったのに、居心地が悪く利用されなければ、お金の無駄遣い・後悔となってしまいます。
地下室の依頼先について注意点があれば教えて下さい。
大規模ビルと違って、住宅ではコスト制約が厳しい事が多く、安易な地下室は避け、地下室を計画する場合は、多くの経験・ノウハウがある建築家・設計事務所に依頼するのがベストだと思います。施工会社もそれに適した会社を推薦してくれると思います。
先日も、予算を抑える為に施工業者に設計・施工を依頼して、工事中に地下室の漏水等多くのトラブルが生じ、困り果てた施主さんに相談を受けましたが、業者が自社では手に負えないと判断し、幸いにも違約金・解体費で示談されたケースもあります。
正直なところ、私も自宅兼アトリエから始まり、多少の失敗を重ね、実績を積み重ね、やっと居室として利用できる仕様の地下室設計・監理を会得しましたので、本やネット情報だけで地下室を設計できるほど易しくないハズです。
そのような理由と利益を生み難い、地下築造はハイリスクなので、ハウスメーカーが引き受けないと思われます。
三村邦彦建築設計事務所 三村 邦彦さんの地下室設計事例
画像 | 建物の名称 | 紹介文 |
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横浜市南大田 斜面地の家 | 最初に土地を拝見した時点で、平面プラン、外観は殆んど頭の中で描かれていました。 | |
藤沢市 鵠沼4世帯住宅 | この土地の大きな欠点でもある約3mの高低差を利用して、容積緩和が受けられる総地階とし、 | |
西鎌倉二世帯住宅 | 道路と敷地の高低差を利用し、広大な半地下と2台分の駐車場を確保しました。 | |
鎌倉市 腰越二世帯住宅 | 風致地区で、完全二世帯住宅にした場合、手狭になる住空間を地下室、ロフトを活用した4層にする事で補いました。 | |
鎌倉市 津西の家 | 『緑豊かな風景をできるだけ室内に取込むにはどうしたらいいか』ということで、それを可能にする構造、開口、プランニングを考えました。 |
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